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41日目

09 27, 2014 | 探索日誌

靄が燻る早朝、マハは早々に身支度を終えて一息ついていた。
ここ最近は、漸く茹だるような暑さが遠ざかり、早朝は肌寒いほどに秋が近い。
吐息はまだ白く染まらないけれど、そうなるまでそう時間はかからないかも知れない。
そうなれば今は足元を濡らす朝露は霜となって、さくさくと小気味いい音を立てるのだろう。

不意に、宿からカネルが出てくるのが見えた。
――宿はどこも一階に食事を取れる場があることが多く、水や調味料を貰うこともままある。
宿泊しなくとも、探索者の多いこの地ではそうした融通がきくようだった。
それだから、カネルの手には調味料の入っているらしい小瓶が握られていても、さして気にはならなかった。


「おかえり。」

「……ただいま。」


短い会話とも言えない言葉を交わしてから、マハは苦笑した。
こうして眉間に皺を寄せている時は、大体があの猟師の少年がらみだ。
カネルの過去に一応の区切りがようには感じていたけれど、それはそれとして、猟師に良い感情を持てる筈がない。
それはマハ自身にもよく解っていたから、掛ける言葉は見つかりそうになかった。


「すまないな、調味料の残量を把握していなかった。
 今日にでも、市が開いたら買ってこよう。」

「いや、俺もすっかり忘れていたから。
 昨日は店で食事したから……油断してた。」


これが戦闘に関することだったら、とカネルは歯噛みして、調味料の入った小瓶を置いた。

――気が緩みすぎていた。

毎日鍛錬はしている。
狩りも、戦闘もしている。
それなのに、そう感じる。

油断をしてはいけない。
つけ入る隙を与えてはいけない。
そうでなければ、あの日を繰り返すだけだ。

自身の命を蔑ろにしないと考えを改めたけれど、人間に関してはそう簡単に割り切れそうもない。
先程視界に入った人影が思考を掠めると、言いようのない憎しみが頭を擡げた。


「……いつまで…――」


――いつまで人間なんかと行動しなければいけないんだ。

呟こうとした言葉を既で飲み込んだ。
マハはそれを知ってか知らずか、聞こえていない素振りで血抜きの終えた肉を裂いた。
カネルは暫しその様子を見てから、考えを振り払うように頭を振り、手伝う、と短く声をかけた。

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