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25日目

04 08, 2014 | 探索日誌

ほう、と吐いた息は白く色付いて、それから霧散するように消えた。
消える白を追いかけて視線を落とすと、地面も白い。
歩を進めればさくさくと儚げな音がするのに、耳が痛くなるほど静かに感じられた。

雪は昨夜から今朝にかけて降ったが、今はもうやんでいた。
張り詰めたような空気は、肌をちくちくと刺すほど冷たい。
早朝だからか、雪は誰にも踏み荒らされてはいなかった。
マハは雪を踏みしめながら故郷を思い出して懐かしくなり、同時に辛い日を思い出して複雑になった。
視界の端で、木の枝に積もった雪が重みに耐え切れずにばさりと落ちた。

妹を失くして、戦って、山猫を拾った。
それはもう随分前のように感じるし、つい先日の様な気もする。
それでも思い返す度に痛んだ胸は徐々に穏やかになってきたから、こうして乗り越えて行くのかもしれない。
――自分だけは。
マハはちらと振り返ると、青白く霞む向こうに自身のテントを見た。

旅を共にしている山猫の少年――カネルは、まだ痛みの只中にいると、マハは常々思っている。
雪が降る季節になる度、寂しそうに空を見ていた彼の横顔を思い出す。
辛い出来事を乗り越える早さは人それぞれだけれど、カネルは無理矢理に乗り越えた事にしている節がある。
日々怒り、悲しみ、ふつふつと煮えている癖に、妙に背伸びして平静を装っている。
それは生き急いでいるとも投げやりとも思える印象を受けた。
ただマハには、背伸びすることで自身を保っているのかとも思えて、何も言えずに見守ることしか出来ずにいた。


「難儀なものだ…。」


苦笑して、傍らの樹の幹を爪で掻いた。
とうとう腹を割って話すべき時期が来たのだと、妙な確信があった。



***



――名を呼ばれた気がした。

事実、耳は自身の名を拾った。
戦闘中に名だと認識するよりも早く、音だけで振り返ったから、後になって漸くそう気づいたのだ。
マハ、後ろ、と。


「カネちゃん!」


誰かの叫び声を遠くで聞きながら、視界の端で赤く染まる雪を見た。


――今度こそ家族を守るんだ。


カネルの呟きが耳に蘇る。
初めて聞いた時、なんて呪いじみた台詞だろうと思った。
失いたくないから守るのは至極当然の事なのに、彼の言う「守る」にはカネル自身が含まれていないように思えたのだ。
守る対象の命だけが無事ならば、それ以外はどうでも良いように、彼はその言葉を繰り返す。
彼が守ろうとする者も同じように彼を大事に思っていると、カネルはまだ気づけ無い程辛い記憶が強い。
だから、今日。
今日こそは話そうと――。


――お前は大馬鹿だ。


そう思いながらも敵を沈めると、漸くカネルに駆け寄った。
赤い雪、青い顔、閉じられた瞳。
これが誰かを守ることだと言うのだろうか。
こんなの、誰も救えないじゃないか。

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