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14日目

11 18, 2013 | 探索日誌

蝋燭の炎が揺れるテントの中には、様々な糸が転がっていた。
買い込んだばかりなのか、紙袋から転がり出た糸がころころと不安定に揺れている。
赤青緑、茶色に黒。
マハは幾つかの糸を手に取ってから、これにしよう、と心の中で呟いて針に糸を通した。

白い布に慣れた手つきでちくちくと刺繍を施していると、村での日常を思い出す。
村ではほとんどの布に模様が織られ、あるいは刺繍され、木の柱には彫られている。
魔除けだとか伝統だとか趣味嗜好であるとか様々な理由があるけれど、浸透し愛されているものだからだとマハは思う。
だからこそ身についた裁縫の腕に、今改めて感謝したい気分だった。
狩猟以外に得意なことといえば、これくらいしかない。


「野菜料理なんて作れないし」


呟きながら、憎々しげに針を刺した。


「笑顔もうまく作れる気がしない。」


呟きながら、ため息混じりに針を抜いた。
それでも渡す時くらいは眉間に皺を作らないようにしなくてはと思いながら、自身の気性では難しいだろうとも思っていた。
しかしお礼を言うならばブチは笑顔が良いと言って――正確には発言ではなかったが――いたし、
それくらい頑張れなければ狼族の名折れのようにも思う。

考えながらも習慣というものは恐ろしいもので手は妙に動き、完成は近かった。


「あと少し、か。」


一息ついて目の前に広げたのは、刺繍が施されたハンカチだ。
白地の柔らかな布に、刺繍で縁取りがされている。
四隅にはそれぞれ茶のうさぎと斑模様のうさぎと、てんとう虫と貝殻があしらわれている。


「まぁ、なかなかの出来だ。」


マハはふふん、と自慢気に息をついて、続きを黙々と刺繍し始めた。
その傍らには草色の包装紙。
きっと明日には渡せるだろう。

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