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10日目

10 05, 2013 | 探索日誌

暗闇の中で炎の爆ぜるぱちぱちとした音だけが響いていた。
その傍らには白い円形のテントが張られている。
テントとは言えその中心には木の柱が立てられた頑丈なもので、室内は大人の男が大股で歩ける程度には広い。
室内は布で二つに分けられていて、その一方にマハは寝転んでいた。
既に四半刻ほどの間、仰向けのまま天井に片手をかざし、暗闇だというのにその手の甲を見つめていた。

「ごめんね、か。」


そう呟いて、ゆっくりと手を下ろすと瞼を閉じた。
マハにそう伝えたのは、茶色の毛並みの兎だった。
切っ掛けは、些細なことだった。
マハの代わりに飯を買ってきた兎の手には兎肉のシチューがあって、マハはそれを受け取れないと言った。
端的にはそれだけで、個々の感情を別にすれば何ということもない話だった。

それなのに、兎はわざわざ謝りにきた。
兎の手には今度は巻き貝の首飾りが握られていて、しかもそれはマハに作ったのだと言う。
そもそも相手が悪い訳ではないから謝って欲しいわけではなかったけれど、その言葉には自身の言いたかったことが伝わったと、
そういう意味も含まれている気がしたから素直に受け取った。
憶測ではあるけれど、きっとあの兎は自身の口調から何かを感じ取ったのだろう。

マハは少し前の出来事を反芻しながら、見つめていたのとは別の手を僅かに動かした。
その手には、先ほど貰ったばかりの首飾りが握られている。
木と石を革紐で繋いで、中央には虹色の巻き貝が揺れている。
受け取って良かったのかと今更ながら戸惑って、受け取らないほうが失礼だろうと思い直すのを何度か繰り返していた。


「…そういえば…。」


これを受け取った時に、お礼を言っていないのではないだろうかと、漸く思い当たった。
予想外のことばかりをされて、多少平静さを欠いていたのかもしれない。
侘びの意味で作ったのかもしれないが、例えそうだとしても、もっと気の利いた言葉くらい言っても良かっただろう。

ひとつ心を決めたところで、とろとろと瞼が落ちてきた。
マハが身体を縮めるように丸くなると、手に握りこんだ首飾りはチャリチャリと音をたてた。
その音が妙に暖かなのは、木と石が連なっている所為だけではない。


「…ありがとう。」


そう伝えられるだろうかと思いながら、今度こそと睡魔に身を任せた。
首飾りの巻き貝から、穏やかな潮騒が聞こえた気がした。

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